サンタクロースの皆さんは焦らず落ち着いて行動してください
その歌を聞いた幼いころの私は、サンタクロースが慌てることなんてないと高を括っていた。
「サンタクロースっておじいちゃんなんでしょ?人生経験が豊富なおじいちゃんが慌てることなんてないよ。」
今思えばそのころの私はませたガキだったと思う。
しかし事件は起きてしまった。
10歳のクリスマスイブ、就寝しようとした時。妙に寝にくい。
枕が硬いせいだと気が付いて枕を直そうとすると、何かが手に当たった。それはつるつるしていて、中にいわゆる”プチプチ”と同じ弾力と四角いフォルムを連想させる硬さがあった。
私は恐ろしくてそれを一切見ず枕の下にしまい込んだ。そしてぬいぐるみを枕代わりにして寝た。翌朝、全てを忘れていますようにと願いながら。
翌朝、私はいつもよりも遅い時間に起きた。
ゆっくりと枕に目を向ける。下から昨夜のつるつるとしたものを取り出すと、綺麗に包装された袋だった。
それを懇切丁寧に開け、中から一冊の本を取り出す。私の好みの本だった。
喜ぶでもなく、「思っていたのと違う」と残念がるでもなく、ただただ無表情でそれを見つめていた。はたから見ればさぞかし異様な光景だったと思う。
リビングに行って自分の朝ご飯を用意していると、会社に行く支度をしている親に会った。
「おはよう、サンタさんから今年もクリスマスプレゼント貰った?」
と笑顔で聞かれ、私は答えるしかなくなってしまった。
「うん。私の好きな本を貰ったよ」
私の精一杯の笑顔は、ぎこちなさを隠せていただろうか。
押さない、駆けない、喋らない、戻らない
これは小説の類です